第20章 桜が舞えば想いは消える
柔らかい木漏れ日が降りしきる中で、目を覚ました。
あれ?ここ....
そこはいつもの部屋、いつもの自分の部屋だ。
ミルキーベージュのベットの上
あぁ、助かったんだと思う反面、何故か肩を落とす。
どうやら神様はまだ僕にこっちに来るなって言いたかったみたい
まぁ、神様なんて信じてないんだけどさ
体に痛みはない。
きっとチョロ松兄さんが全部治してくれたんだと思った。
なんとも言えない感情、空虚とでも言うんだろうか?
そっとベットから起き上がれば、全身にやって来るのは疲労感だ。
ぼうっと窓の外を見つめる。
優しい光がふる中で、満開になっている桜が気持ち良さそうに揺れている。
いったい僕はどれくらい眠っていたんだろうって、ぼやけた頭で考え込む。
「....一週間くらい」
僕の心の声をキャッチしたのか、そうボソリと呟くのはいつのまにか椅子に座っていた一松兄さんだった。
「....おかえり」
にやぁっと怪しい笑顔は、この空間に全くあってない。
「一松兄さん....」
聞きたいことを言えずに口ごもる。
まだ受け入れたくない、もしかしたら、もしかしたら....
そればかりが頭をよぎるんだ
「....助けられなかった」
僕が言いたいことを先読みして答えていく一松兄さん。淡々と伝えてるけど、本当はとっても心配してるのが痛いほど伝わってくる。
だって目が赤いんだもん、きっとずっと泣いてたでしょ?
「チョロ松兄さんが、ごめんって言ってた、助けられなくて.... ごめんって」
「そっ....か....」
ぼやかしていた絵を、濃い色で塗ったみたいにくっきりはっきりと突き刺さる現実
「トド松.... 生きててよかった」
ポツンとこぼれた言葉
嬉しいはずなのに、なのにこんなに胸が....
「....ありがとう....心配かけて.... ごめんなさい....」
頑張って笑ってるはずなのに
窓にうっすらと映る顔は、酷く歪んでいて
真っ直ぐに一松兄さんの顔を見れなかった。