第20章 桜が舞えば想いは消える
血溜まりの中に沈む僕の友達
「神よ、このものの罪をお許し下さい」
「「アーメン」」
耳につく不愉快な声が、響く
罪?
罪ってなに?
あつしくんがなにをしたっていうの?
ねぇ?
教えて
誰か
「さぁ!化け物に心を売ったものは死んだ!」
口々に聞こえる声が、僕の中に入り込んで心を黒く黒く染めてく
「後始末は私がしておこう、各自村へ帰り体を休めてくれ」
その一言にあつしくんを殺したことでおさまった暴動は、村へと向かう
村人全員が見えなくなった後で、耳障りな高笑いが聞こえた
「くくっははっ!聞こえているか化け物!」
嫌でも耳につく声
「哀れだなぁ?お前を助けようとしたせいでこの通りだ!村の連中も、私が噂をばらまいたとも知らないで」
そんなことだろうと思ってた。
そうだよね、だって僕はあつしくんと友達になってからこの村で血を吸ったことも人を傷つけたこともないから
「殺して欲しいか?殺して欲しいだろう?でも私の目的はお前を殺すことじゃない、絶望に染めることだ」
本当に悪趣味だ。
ヘドが出る
「私はお前たち一族を許さない、永遠に永遠に呪い続けてやる!未来永劫な!!」
そういって、去っていく後ろ姿
なんで?
動かない体
力さえあれば
殺してやれたのに
人間なんかに
人間.... なんかに....
「....あつしくん」
動かない体を必死に動かす
桜の幹にもたれながらゆっくりと立ち上がる。
体が重い....
一歩
また
一歩
ゆっくり
ゆっくりと
「あつしくん.... 」
血の海の中で、僕の友達は横たわっていた。
胸に空いた穴を、そっと手で押さえる。
手があつしくんの血で染まっていく。
かすかに動く心臓の音
あつしくんの頬に雨が降る。
一滴二滴
雨は止むことはなくて....
「つめ....たい.... よ」
掠れた弱々しい声が、僕に語りかけた。