第20章 桜が舞えば想いは消える
「だ、そうだ?つまりはこいつも化け物の仲間ということになるね?」
ニヤリと笑う銀の仮面の言葉に、僕は目を見開く
「神父様よぉ、この間はよくもやってくれたな?」
顔に包帯を巻いた男があつしくんに、にじりよってくる。
うわ、あんなになるまでしたの?
ばっかだね....
「なんのこと?俺はサンドバッグを殴っただけだけど?」
なんでそんな怒りを煽るようなこといっちゃうかな?
その場で取り押さえられるあつしくん
両手を持たれてひざまずかされる。
「馬鹿な男だな、素直に化け物を渡せばいいものを....」
包帯を巻いた男にどかっと腹を蹴られて、げほっと口から血を吐く姿が見える。
「この異端者が!」
「この異端者に神の裁きを!」
口々に聞こえるあつしくんを否定する声
助けなきゃ、そう思って足を動かす
『何があってもここにいて』
あつしくんとの約束が、痛むお腹が、そこから流れる血が僕の足を拘束する。
「神父ともあろうものが、ヴァンパイアを助けるなど....神に恥ずかしくはないのかね?」
あざ笑うその仮面に、髪の毛を掴まれて上を向かされれば、ぺっと僕と同じことをするあつしくん。
「俺は神様なんか信じちゃいないんでね、あんたこそ恥ずかしくないのか?人としての尊厳を忘れた目をして、憎しみに濁った目ほど、醜いものはない」
血まみれの青白い顔をしながら、目の前のやつを見据える。
「く、くくっ、なるほど?不愉快だ!なんて不愉快なんだ」
嫌な金属音が夜に響く
ぎらりと月明かりにうつる、銀の剣
「はっ、人を助けるはずのヴァンパイアハンターが人を殺そうとするとはね.... 傑作だよ」
にやって笑うあつしくん
僕は瞳に力をこめる。
でも何故だか上手く力が集まらない。
体をひきずる
必死に手をのばそうとした
その瞬間
「俺、トド松くんに出会えてよかった!!」
のばした手が止まる
「トド松くん....ありがと....」
空に向かって叫ぶあつしくん
「....死ね」
異端者と叫ぶ群衆....
ゆっくりとスローモーションで降り下ろされる剣....
言葉が終わらないうちに
ざくりと嫌な音がかすかに聞こえ....
血飛沫が....
空を舞った....