第20章 桜が舞えば想いは消える
ジャラジャラと煩い音が耳元で聞こえた。
「起きて....トド松くん」
ぼうっと目を開けた先に見えるあつしくんの顔
「....迎えにくんの、遅くない?」
もう僕かなりボロボロなんだけど?
お気に入りの服もボロボロ、見る影もないし身体なんか....
「手間取った、アイツだよ。あのヴァンパイアハンター」
よいしょっと僕を支えながら、立ち上がらせる。足がガクガクするんだけど
「ずいぶんトド松くんのこと恨んでたよ?俺でもわかる。あれ相当にヤバイ奴だよ」
まぁ、逆恨みのなにものでもないんだけどさ。
「おかげで、父さん人質にとられたり、とんだ災難だよ。あげくトド松くんのことを刺せとか言われるし、友達刺すとか最悪だよ」
本当に悪趣味なやつだな、僕だってそんなことしないよ?
....やだな、これじゃ僕が腹黒いみたいじゃん!
「悪趣味」
「言ってたよ。簡単に殺さない、絶望で心を真っ黒にするまで逃がさないって....頭おかしいんじゃないの?」
刺された側と刺した側のする会話じゃないよね。でも、いくとこまでいってしまったら誰しも吹っ切れるのかもしれない。
冷たい階段を歩いて、二人で外へ向かう。
一歩外へ足を踏み出せば、もう桜が少し咲いてた。空をみれば、半月が淡く光っていて、生きてることを実感する。
「ねぇ、痩せたね?顔ほけてるよ」
半月に照らされてみたあつしくんの顔は、以前よりずっと痩せこけてて青白い。
「....気のせいなんじゃない?それよりお腹減った」
はぐらかして何を言うかと思えば、本当になにこの会話。
「そんなの僕だって一緒だよ」
「んじゃ.... 飲む?」
神父服をぐいっと片手で崩して、首筋を見せてくる。
「野郎の血なんかいらないよ、飲み飽きた。それに友達にされて嫌だったこと、僕はしない」
「それ、確実に俺のこと責めてるよね?」
「当たり前でしょ」
二人でにやっと笑いあう。
まだズキズキと痛い腰、人間への憎しみは消えない。
.... だけど
「トド松くん、タバコ吸いたいんだけど持ってる?」
「あのね、僕ボロボロだよね?何処にタバコ入れとけるの?馬鹿なの?」
あつしくんとなら、笑ってられる.....