第20章 桜が舞えば想いは消える
「ふざ.... けんな」
ぎっと睨めば、またしてもあがる口角。
「ふざける?全く一族揃いも揃って不愉快な連中だな?どいつもこいつも同じ目をしている」
こいつ.....
脳裏に宿ったのは、一つの答え。
本当に面倒なものに捕まったみたいだ。
「どうでもいいけど、その事は僕に関係ないんじゃないの?逆恨みも大概にしてよね」
なんでちゃんと後始末しないのか、ほんと人間に甘いからこんな面倒なことになるんだよ
今度兄さんに生きて会えたら、おしおきしてやるんだから
「....逆恨み?」
バシッ!
すごい音がした、じんじんと痛む頬。
パシパシと手に鞭を落としながら、銀の仮面は冷たく笑う。
「私はな、私は.... お前ら一族が許せないのだよ?わかるか?全てを失った私の気持ちが?」
ほんと....
最悪
ペッと口から血を吐いてにっこりと微笑む。
「そんなクズの事なんか、いちいち覚えてるわけないじゃん?人間なんて地に這いつくばって、エサにでも成り下がりなよ?」
バシッとまた音がして、体に激痛が走る。
「他の奴等とは思考が違うようだな?だが、あいつと同じ顔をして生意気なのはいい.... いじめがいがあるというもの」
鞭で顎をあげられ上を向かされる。
「エサにでも成り下がれ.... か、滑稽だな?エサであるはずの人間にこんなふうにされるなんて、どんな気分だ?」
そんなの最悪に決まってる。
ペッと銀の仮面に、ささやかな抵抗を示す。
少し血が混じったつばがつうっと銀の仮面の一点を汚す。
「く...くくくっ、はっはっは!どうやら自分の立場がわかってないらしいな?無様だあまりに無様!」
耳障りな高笑いと、鎖の音が混ざれば最悪のハーモニーの出来上がりだ。
ガンっと顔を蹴り飛ばされる。
だんだん痛いのが麻痺してきた。
「どうだ?ん?自分の信じていた人間に裏切られるのは?お前のような奴ならなおさらだろうな?悔しかろう?悲しかろう?ふっふふっ.... あわれだなぁ!化け物が!!」
本当に、僕もそう思うよ。
ズキズキと身体中が痛む.....
でも一番痛いのは、胸だ。
胸の中が痛い
どうして?
僕....
君を信じてたのに....
ぼんやりする意識の向こう側で、うっすらとあつしくんを思う
ははっ....
信じた僕が馬鹿だったんだ....