第20章 桜が舞えば想いは消える
ジャラジャラと鳴る金属音が耳障りで目を覚ました。
ここは、何処なんだろう?
ぼうっとする頭で辺りと見回せば、そこは気持ちのいい所でないことがわかった。
「....地下牢か」
蝋燭でぼんやりとうつされる冷たそうな石畳
石畳に散らばるのは、人間の成れの果て、白く無機質な骨だ。
ぴちゃんと何処からか水滴音が聞こえてくる。
「お目覚めかな?」
目の前に映し出される人物は悪趣味な銀の仮面をつけていた。
「ものすごく不愉快な目覚めなんだけど、誰?」
鎖で繋がれるなんて冗談じゃない。目に力を宿そうとするも、どうしてだか力が入らない。
「無駄だ。今、貴殿の手首についているのは純銀製の鎖でね?ヴァンパイアにはちとキツいだろう?」
純銀製の鎖なんて、持ってるやつそうそうにいない....
鎖をみれば、薔薇のホールマークがほりこまれている。
これガチのやつじゃん!
どうやら、とんでもないものに捕まってしまったみたい。
「ふーん、随分となめたまねをしてくれるね?ヴァンパイアハンターさん?」
にこっと笑えば、パチパチと手を叩く音が地下牢に響く。
「ほう?その鎖だけで私の正体を見抜くとは....本当....」
「ゲホッ!!!」
「不愉快だな」
お腹に強い衝撃が走る。
傷口をなにくわぬ顔して蹴るとか、悪趣味だ。
「何故君がここに囚われているかわかるかね?」
口元にうっすらと笑みを浮かべる、銀の仮面。
そんなこと僕が知りたいよ。
「この村の人間から君を退治して欲しいと、頼まれてね?」
痛みで意識がぶっ飛びそうなんだけど、僕が何したっていうの?
一年前ならわかるけど、今はそんなことしてないんだけど?
「おや?何故自分が、囚われるのかわからないという顔をしているね?」
嫌な感じ。
ずきずきと痛むお腹、口に広がる血の味、抜けていく力、そんな最悪なことが全部一気にやって来るってとんだ厄日だ。
「まぁ?そうだろうな?しいていうなら血を吸う化け物として生まれたこと、それが囚われる理由とでも言っておこうか?」
本当に、笑っちゃうよね?
そんな笑っちゃう理由。