第20章 桜が舞えば想いは消える
金色の髪が手に絡まる。
午後の心地よい風が窓からさぁっと通り抜けて、淡い桃色のカーテンを揺らす。
そんな穏やかな午後に揺れるふわふわな髪は、金糸みたいだ。
「トド松様!これも素敵です!」
にこっと鏡の前で笑う、青い瞳。
その後ろには、くしをもって難しい顔をしてる僕
「なんか違うんだよね、そもそも西洋風ってなに?」
顎に手をあてながら首を傾けて、じーっと鏡を見つめる。
「トド松様、何故髪型の研究を?アザゼルには不思議なのですが?」
小首を傾げながら、不思議そうな顔して聞かれる。内心僕の方が聞きたいよ。
「まぁ、ちょっとね?髪痛い?無理させてごめんね」
「い、いいえ!アザゼルはトド松様のためならなんでもします!」
そういってにっこり笑う顔を見ながら、くしを通す。
『そうだ!トド松くん、俺の嫁さんの髪結ってやってくんない?』
そんな無責任な一言と、爽やかに笑う顔が頭に浮かぶ。
ほんとさ、僕のことなんだと思ってんだろうね。
大丈夫、トド松くんならできるよ、なんて言われて
僕の気持ちなんてお構いなしでさ?
僕は寂しくてしょうがないってのに....
「そうだ、本物の花とかいれたらいいかな?」
もしそうなら、きっと淡い色の花がいいだろうな。黒い髪には淡い色の方がきっと似合う。
「本物の花....ですか?」
また小首を傾げるアザゼル、まぁアザゼルにするなら絶対濃い色だろうけどね。
金糸みたいなアザゼルの髪をくしでとかす。
今さらだけど、あつしくんのお嫁さん見たことないんだよね。
.... たぶん黒髪だよね?
もし違ってたらその時考えよう。
黒い髪に映える色を頭のなかで探しながら、ふと思うのは、何故自分がここまで一生懸命なのかということ
「人間のため.... じゃない、あつしくんのため」
そうポツンと呟きながら、鏡をみればどことなく嬉しそうな顔する僕がいて複雑だった。
あつしくんと出会って以来、むやみに人の血を飲めなくなってしまった。
消してしまえばおしまいだったはずなのに....
この時代に輸血なんて便利なものなかったから、僕の力の衰えは顕著に出ていた。
ほんと僕も焼きが回ったよね....