第20章 桜が舞えば想いは消える
たしかに、あつしくんが人間じゃなくなったら面白いかもねなんて考えが浮かぶ。
「あつしくん、人間は嫌い?」
さあっと一陣の風が舞う。
少し冷たい風。
「....なんでそんなこと聞くのさ?」
ふっと笑いながら、しゃらしゃらとロザリオを触る。
ばっと立ち上がって、後ろに手を組んで数歩歩いて今までの記憶を巡らせて、くるりと後ろを向く。
「僕はね、人間が嫌い。醜悪でどうしようもない、そんな人間が....」
エサとしか思わなかった、酷いこともたくさんした。でもなんとも思わなかった。
傷つけたところで、記憶を消してしまえばおしまい。全てなかったことにできる。
都合のいい能力は、僕を傲慢にさせていたのかもしれない。
「でもあつしくんに出会ってちょっとは変わったんだ?」
ふふっと笑いながら、あつしくんを見つめる。
こんな人間に出会ったのは初めてで、だからできるならずっと友達でいたい。
でも人間であるあつしくんの命は、僕よりもずっとずっと短い。
だから....
「ねぇ?こっちに来ない?あつしくん」
さっと手を出して笑う。
強い風が吹けば、あつしくんのロザリオが風になびく。
今思えばそれは、恋に似た感情だったのかもしれない。
ただ強くひかれた。
そう、強くひかれた
それだけのこと....
彼の思想、飄々としている所、人間だとか怪物だとかそんな狭い枠に囚われない生き方に....
僕は魅せられたんだ....
人を思いのままに操ることのできる僕が、魅せられたのはこれが初めて
だから、ずっと友達でいたいと....
そう....思ったんだ。
けど....