第20章 桜が舞えば想いは消える
「で、トリュフが焼きチョコになったと」
僕の話を聞きながら、クスクスと笑うあつしくん。
「まったく!笑い事じゃないよ!?僕がどれだけ苦心して湯煎したかわかる?!刻んで、温度計りながらゆっくり手間暇かけたっていうのに!もう!」
まだ少し寒い春の始まり前、すんだ空の下
....ヤロー二人でチョコ食べてんのもどうかと思うんだけど
「今、なんでヤローとこんなとこでチョコ食ってんのかって思ったよね?トド松くん、モテるんじゃなかったっけ?なんで俺といるの?」
にやっと笑う顔が憎らしい。
「あつしくんが教会でエッチするのやめろっていったんじゃない!まったく、せっかくの穴場だったのに」
パクッとチョコを口にほりこむ。
苦味が口の中に広がったあとに、少し残る甘さが舌に溶けた。
そのあとにまたやって来る苦味が、僕的にはあんまり好きではない。
大人の味ってやつ?
「このチョコあつしくんに似てる」
ポツリと僕がそう言うと、この前のことまだ根に持ってるの?なんて笑う。
「最初苦いのに、ちょっと甘さだして、また苦くなるとこがそーーっくり」
「的確な表現ありがとう」
皮肉のつもりで言ったはずなのに、爽やかな笑顔で言われたら腹立つよね。
ほんと腹立つよね。
金のロザリオをチャラチャラとならしながら、僕の作ったチョコをパクパクと食べる。
「ねぇ?思ったんだけどさ?僕あつしくんに物あげてばっかじゃない?」
そしたらピタリと止まって、ふっと笑う。
「そうだったねー、んじゃなんか欲しい?」
素直な質問。
それに答えようとして、考えてみたけどとくに欲しいものもなく。
「いや、いらない」
「でしょ?ヤローに物貰って嬉しいわけないじゃん?あっ、これとこれは別ね」
言いながら指差すのは、チョコとタバコ。