第20章 桜が舞えば想いは消える
そんなことないよぉ?僕全然わかんないって言いながらうるうるした純粋無垢な瞳で見つめたら、寒気するってバッサリきられた。
「言っとくけど、僕男にもモテるんだよ!」
ムキになってみれば、はぁっと一つため息をついたあとにじいっとこちらを見てくる。
「だったとして、それって嬉しい?俺だったら願い下げなんだけど」
ものすごい真顔で言われたらなにも言えなかった。
たしかに、同性にモテたところであんまり嬉しくない。むしろ気持ち悪い。
イスに座りなおして、足をくみ神父服を軽く着崩しながら僕のほうをみる。
「ところで、トド松くんタバコ持ってない?」
あろうことか懺悔室でタバコを吸おうとする罰当たりな、神父もどき
「持ってるよー」
そしてそんなことはお構い無しに、普通にタバコを一本渡す優しい僕
これがいつもの日常。
お気に入りの紅茶の入ったタバコをお互い口にくわえる。
僕はすかさずマッチを一本すってから、あつしくんのタバコに火をつけた。
「さすがトド松くん、女子力高いわー」
「おだてたってなにもでないよ」
そんな会話をしながら自分のタバコにも火をつける。
ふうっと二人で煙をふかせば、神聖な場所がたちまち紅茶の甘い香りでいっぱいになる。
一人で楽しんでいた時よりも強い甘い香り、これが女の子ならよかったのになんてお互いに言い合うのもまた日常で
でもやっぱり、タバコを一緒に吸うなら、男友達との方がいいんだと言い合う。
いつでも殺せるかとか、記憶が消せるかとか思ってたのが遠い昔みたいだ。
「今日って温かいよねー」
「小春日和ってやつ?にしても、やっぱ仕事の後の一服って最高」