第20章 桜が舞えば想いは消える
「私は人の物を盗んで生きてきました、でも今となっては後悔しかありません」
ほんと、人間って毎度毎度飽きないよね。
「よく罪の行いを懺悔しました、神は貴方をその深き懐に包み、貴方の罪深き行いを許して下さるでしょう。」
そんでもって、あつしくんも毎回毎回飽きないよね。
「あぁ、あつし様ありがとうございます」
「さぁ、おいきなさい、貴方の人生に神の祝福があらんことを.... アーメン」
ここ?
ごらんの通り懺悔室の裏側、向こうに顔が見えなくなってるハーフドアの後ろ側ね?
まぁ、僕がいるのは間違ってるよね。
パタンと閉まるドアの音を聞きながら、ふうっと一つため息。
小さな窓からこぼれる木漏れ日が、目の前にあるイスを照している。
「あー、今日は終わりっと」
背伸びをぐうっとしながら、神父服に身を包んだあつしくんがこちらに向き直る。
「ねぇ?毎回思うんだけどさ?これ飽きない?」
空中にふあふあ浮きながら、うつむせに寝転び頬杖をつく。
まったくさぁ、神なんているわけないじゃん?
罪が消えるわけでもないだろうに、人間って馬鹿じゃないのなんて毎回思うんだけど?
「まぁ、飽きるか飽きないかと聞かれたら、飽きるよね」
そんでもって、あつしくんよ。
なんでそんな見も蓋もないことを毎回言うの?
ほんとウケるわー
「神父の息子なだけでしょ?なんで懺悔室なんて運営してんのさ?気が重くなるだけじゃん」
そしたらまた笑って、そうだねって即答するもんだから吹き出す。
「俺さ、絶対に将来神父とか向いてないと思う」
「それ僕もそう思う。どこにいんの?こんな覗き見趣味の神父?逆に神様に失礼だよ」
「前から思ってたけどさ、トド松くんて辛辣だよね」