第20章 桜が舞えば想いは消える
二人して黙ると、静寂が訪れる。
鈴音ちゃんの髪に再び手を通して、さらさらの感触を楽しみながらくしをとかす。
そんな中で唐突に話すのは僕で、鈴音ちゃんは黙って耳を傾ける。
「昔々.... あるところに、一人の化け物がいました」
そっと紡ぐのは、昔の話
「その化け物は、人の血を吸う化け物でした」
淡々と紡ぐのは、過去の話
「化け物は人間をただのエサとしか思っていませんでした、しかし.... 」
静かに紡ぐのは、遠い日の記憶
「その化け物は一人の人間と出会いました、そして変わりました」
胸のうちに何かを隠して紡ぐのは、思い出したくない過去
「化け物はその人間のおかげで人間が好きになったのです」
目を閉じて紡ぐのは、僕と大切な親友の物語