第20章 桜が舞えば想いは消える
そんな怪しい手つきでベルフェゴールが、私の髪に触れようとした瞬間
「ストップ」
ベルフェゴールを止める声が一つ。
二人して振り返ったら、ニコニコ笑うトド松くんがベルフェゴールの真後ろに立っていた。
毎回の事なんだけど、なんだってみんな足跡一つ立てずに人の部屋に入ってくるのかな?
いや住まわせてもらってる分際で言えないんですけどね。
一応私だって女の子なんですけど?
「なにか?トド松様?」
どうやら私の髪を触ろうとした瞬間に、止められたのがよっぽど気にくわなかったんだろう。
さっきの変態顔は何処へやら、作り笑顔を張りつけてトド松くんに笑うベルフェゴール
「あれあれ?ベルフェゴール、ずいぶんと偉そうになったね?あれで懲りたんじゃなかったの?」
こちらも負けじと冷たい笑顔を張りつけて笑うトド松くん。
「あのあとから、うちは改心したんです。今はもう鈴音御姉様をお慕いしております」
「へー、鈴音ちゃんのこと殺そうとしたくせに、今さら改心とか笑っちゃうね」
バチバチと飛び散る火花、立場的にその真ん中に置かれている私
いやもう、喧嘩とか頼むからよそでやってくんないかな?
ふふふ、と二人の笑いあう顔が表現しきれないくらい怖い。
怖いったら怖い。
あえて表現するなら、好きな男の子をとりあって、机の上では微笑みあっているが、机の下では足を蹴りあっているみたいな
我ながら的確な表現だと思う。
そしてそれを目の当たりにした男子の複雑な気持ち
それが今の私である。
こんな表現がでてしまう時点でおかしいんだけど....
そもそもトド松くんって男の子だよね?
そんなとこまで女子力高くなくていいから!
女の子のどろどろした部分を、的確に表現しなくていいから!