第19章 金木犀の香りはデートの予感?
ゆらゆらと体が揺れてる。
とっても温かい体温と、セッターの香り。
「ん?起きたー?」
夕暮れで染まる町、すぐ目の前にあるのは夕暮れとおんなじ赤い背中だった。
「はっ?えっ?」
「なーんか起こしても起きなかったからさーにっしし」
よっと言いながら上にあげられる体、おんぶしてここまで運んでくれてたの?
「....重かったでしょ....?」
「あー、もうおっもいおっもい、重すぎて潰れちゃうかと思ったわ」
かっちーん....
こいつ....それ女の子に言うことじゃないよね?普通は言わないよね?
「降りる!」
そういって足をジタバタさせると、ずり落ちそうになる。
「ちょっ!わかった!わかったって!暴れんな!」
「うっせ!バーカバーカ!おそ松のバーカ!」
泣いたのを慰めてもらったのと、おんぶされたのでトリプルで恥ずかしくて死んでしまいそうだ。
とさりと地面におろされて、ふいっと違う方向を向く。
「ったく、可愛くねーな」
「はん!あんたに可愛いなんて思われたくない」
いつもの調子に戻ったところで、さっきまではあんなに可愛かったのにと言われた。
「あんたにデリカシーという文字はないのか?」
「え?なにそれ、食えんの?」
その一言に深く、本当に深くため息をつく。
さっきまでは、ちょっと見直したかもなんて思ってたのにとんだ勘違いだ。
やっぱりこいつはヤな奴だ。
デリカシーの欠片もないし、セクハラ発言は多いし.... (以下略)
そんなことを考えてたら、ふわりと香る金木犀
カランと横から音が聞こえたかと思うと、セッターの匂いが強くなる。
「なんでこのタイミングで煙草吸ったの?」
「え?手が空いたから?」
嘘つきにもほどがある。