第19章 金木犀の香りはデートの予感?
「鈴音?鈴音?」
あーれれ、寝ちゃった?
全く、お兄ちゃんせっかくオシャレしたのに、鈴音の涙でぐっしょぐしょだよー
しかも寝ちゃうとか、それって襲って下さいってこと?
いんやーまいっちゃうねー
だっはは!なーんて冗談飛ばしちゃったりして....
俺のあげたバレッタをそっと外すと、さらっと流れる黒い黒い髪
よいっしょっと言いながら、鈴音を横抱きに抱える。
泣きすぎて目が腫れてらー
ひでぇ顔だな、しかもこれが初デートの顔ってどうなの?
笑っちゃうよなー本当
「....いーっつも俺に馬鹿馬鹿いうけどさ、馬鹿はお前だよ?本当、馬鹿だな?」
あんなに俺に甘えて抱きついて、いっぱい泣いて、ずっとこんなに辛いことを溜め込んできてたんだな?
本当は大丈夫だよって誰かに言ってもらいたかったんだろうな?
「ごめんな....?もっと早く気づいてやりたかった」
泣きつかれて眠っている鈴音の頭を撫でて、腫れた瞼にキスを落とす。
「しょっぱ....」
横抱きに抱えても、俺の服を掴んで放さない鈴音
あどけない顔で眠ってる鈴音が、可愛くて守ってやらなきゃと思う。
「また守るもん増えちゃったじゃん、めんどくせー」
なんて一人言いってみるけど、こんなに可愛い重荷ならいくらだって背負ってやる。
「....もっと甘えたっていんだよ、俺はお前を.... お前....を.... 」
その先は言えなかった。
言うことができなかった。
眠っていても、聴こえてなくても、届かなくても....
言えないんだ
どうしても....
夕暮れが、大きな窓から入り込んでくる。
外が赤く染まる。
本当....
切ねー色だな....