第19章 金木犀の香りはデートの予感?
ー私が消えるしかないじゃない?
それをいいかけた瞬間、俺は鈴音を抱き締めた。
「おそ松、苦しいよ」
どうして、もっと早く見つけてやれなかった?
こんな、小さな女の子に何ができるってんだよ。
ずっと前から、見つけていたのに....
幸せを願っていたはずだった
だから、俺は....
なのになんでお前は、今もそんなことになってんの?
「おそ松....私、お母さんを守ってあげられたかな?」
自身の存在が自分を生んだ奴を傷つけるなんて、そんなことあっていいはずがない。
「....違うか、本当はね。怖かったの....否定されることが、だから私お母さんをほって逃げた.... 悪い悪い娘なんだ」
そんなわけないだろうが
そうだろ?こんな家族想いの奴を、誰が否定すんだよ
「お前は....鈴音は誰より優しい女だよ」
抱き締めるしかできない俺は馬鹿か?
そんな当たり前のことしか言えない俺は馬鹿か?
こいつが優しい奴だなんて、初めからわかっていただろ?
誰より優しくて、その優しさのせいで馬鹿みたいに強がってる奴だってわかっていただろ?
「おそ松、ごめんね....」
背中にそっとまわされる腕は、かすかに震えていた。
「もっと.... もっと早く.... 拐っちまえばよかった」
ポツリと出た言葉に、背中にまわされた腕は強く俺の服を掴む。
声を殺して泣く鈴音
「ありがと.... おそ松....ごめん.... ごめんね」
優しく頭を撫でる。
ただ黙って、何度でも何度でも....