第17章 水の底でダンスを....
一歩海へ足を踏み入れると、音もなく沈んでいく。
「レディ、俺から離れるなよ?」
ゆっくりと海の中に沈んでいく感覚が、足元から伝わってくる。
観覧車に乗っているそれと、少し似ている。ただし登っていく感じでなくて、降りていく感じだ。
宙に足がついていない感じ
「怖いか?レディ」
そう問いかけられれば、頭を横にふる。
怖いわけない。
私が離れないように、握られた手
大きいカラ松の手が私の手を包み込んで、先ほどまで同じ温もりではなかったのに、今はすっかり同じだ。
溶け合う体温が、優しい
それを感じながら透明な泡の中から、海を見渡す。
あちらこちらにある珊瑚
その合間をダンスでも踊っているかのように、いともたやすくすり抜けていく魚逹
下からみるとそれはまるで、魚が空を泳いでいくようだ。
「レディ、ほら見ててみろ」
低音の優しい声が、泡のなかで反響する。
開いた片方の人差し指を泡に近づけるカラ松
するとそこに魚が集まってくる。
「凄い.... 」
青色の魚がカラ松の指先に集まって、そっと指にキスをする。
挨拶をしているようだ。
「そう言えば前から思ってたんだけど、お庭って一体なんなの?つかどうなってんの?」
すると魚に微笑みながら、教えてくれた。
「なんだレディ、誰からも教えてもらっていないのか?まぁ言ってみれば、ここは俺の心の中みたいなもんだな」