第16章 紅葉は紅く染まる
月明かりに照らされて眠る鈴音ちゃんの髪を撫でる。
不思議と心は穏やかで、こんなにも満たされていてそれでいて哀しかった。
僕は自分に負けたんだ。
そして、君を傷つけた....
「....鈴音ちゃんの鈴音ちゃんの幸せを心から願うよ」
今さら説得力のない言葉を吐きながら、静かに眠る鈴音ちゃんを見つめる。
それが本当の想いだったとして、願うことすらおこがましい
口内に残る甘い血の味が、僕にそう告げる
「月と同じで綺麗なのは鈴音ちゃんだよ」
あの淡く優しい月の光があまりにも綺麗で、遠い
紅葉が紅く色づくのは、あの届かない月に愛を伝えるためだとしたなら
無意味で
届くはずなんてないのに
その一瞬の時に全てを差し出して色づかせ
届くはずない空へ手を差し出し
そして枯れていく
そっとベットから抜け出して、窓を開ける。
さぁっと冷たい風が通れば
あぁもう、戻れないんだと目を閉じる
それでも諦めきれない紅葉は、何度色づくんだろう?
10回?100回?1000回?
時に縛られない僕ら
時に縛られている君
「好きになってごめん.....
でも好きだよ.... 」
哀しい言葉と、心にしまいきれない言葉をそっと秋の風に乗せながら
僕は静かに泣いた....