第16章 紅葉は紅く染まる
「できるわけない.... 」
その言葉とともに、チョロ松くんは手を緩める。
一気に酸素を吸ったせいで、ごほごほとむせた。
ポタリと暖かい何かが落ちてきた。
「なんで....なんで鈴音ちゃん」
紅い瞳の色が黒く戻っていく。
もとのチョロ松くんだ。
「チョロ松くん....?」
「もう少しだったのに、そしたら僕は完全に薬に呑まれることができたのに」
涙をぼたぼたと落としながら、私の手首にそっと触れる。
暖かい光だ、チョロ松くんのライトグリーンの優しい光
「僕は....なんて酷いことを.... 」
ポツリと呟けば、ベットサイドにいつもおいてある銃を痛みの消えた手にそっと握らされる。
「僕を....殺して?鈴音ちゃん、お願い.... 」
目をつむるチョロ松くん
「....できるわけない」
即答で答えれば、ぐいっと繋がったままのそこを突かれた。小さく声が漏れる。
「なら僕は、このまま鈴音ちゃんを....だから早く撃って?」
そんなできるはずもない願いごとを唱えられたところで、私に叶えられるはずもない
「鈴音ちゃん」
祈るように、目をつむるチョロ松くん
ごとんっとベットの下に銃を落とす。
「酷いよ.... そんなできるわけないこといわないで」
そっと頬を撫でられて、眉を下げて困ったようにニコりと微笑まれた。
「僕だって、同じだよ。大好きな人を殺せるわけないよ....どんなに正気を失ってたとしても....」