第16章 紅葉は紅く染まる
眠る君の横に立つ。
すやすやと安らかに眠る君を見つめながら、ロープを取り出す。
月が紅い。
この行動が狂っているなんてことは、初めからわかっていた。
『恋はいつだってハリケーン!そう思わないか!?』
なんてイタい台詞をカラ松が吐いてたっけ?
そうだね?
きっとそうだ。
もしも恋をそんなふうに例えるなら、意外と呆気なく過ぎ去るものなのかもしれないね。
....でも僕の心は違う。
呆気なく過ぎることなんて皆無で、その場に停滞する渦でズタズタになりそうだ。
戻れないし、もう戻る気もない。
「君が欲しい」
例えそれを神様が許してくれなかったとしても....
頭の中でずっと囁く悪魔なら許してくれるだろう。
どんなに願っても手に入らないものなんて、数えきれないくらいある。
でも一つくらいいいじゃないか。
力も、地位も、何もない僕が一つ望んだっていいじゃないか。
「兄さん達にも、弟達にも譲れない」
一つくらい僕が貰ったっていいよね。
それがどんな結果になったとしても。
ふっと口角をあげて、君の四肢をベットにくくりつける。
窓を見れば紅葉が全部、緑から赤に染まって夜にその姿を晒している。
窓に映る僕と同じ瞳の色をしていた。
染まった葉は二度と元には戻らない。
二度と緑になることはない。
ただただ、色に染まって染まりきって枯れて落ちていくだけだ。
終わりを心に描きながら、君の髪を撫でる。
紅い月が僕を見下げて、嘲笑っていた。