第16章 紅葉は紅く染まる
「あんた、誰」
言葉を投げ掛ければ、ピタリと止まる指先。
「さぁ?もう忘れてしまったから、自分が誰かなんて.... 」
忘れた?
それってどういうこと?
自分で自分がわからないってこと?
動かない身体、この先きっと私はこいつに無茶苦茶にされる。
でも何故か、どこかひっかかる。
「何を考えてる?」
指先が胸元へと降りてくる。
プツンプツンと外されているボタンが、あまりにも呆気なくて笑いそうだ。
滑らすような指使いが、不快な感情を呼び覚ますと同時に疑問が絶え間なく押し寄せる。
「こんなことしてて、楽しいの?」
そう首を傾ければ、ふふっと笑う声が耳につく。
「楽しいよ?もうすぐで君を自分のものにできるから」
残酷なことをさらりといってのける。
自分を失ってまで、私を自分のものにしたかったということ?
わからない
この人が
「身体が欲しいの?ふーん飢えてんだ?この変態」
真顔でそういってやれば、ぐいっと顎をつかまれて上に向かせられる。
「君はあれだね?人を煽る癖があるの?それともそんなに早く無茶苦茶にされたいの?あぁそうか、誰にでも尻尾をふる雌犬なのかな?」
棘のある言動。
誰が雌犬なんだか。
「おい、調子にのるなよクソが、てめえが何者かはしんねぇけどな、やられ続けるほど馬鹿じゃねぇんだよ」
ぎっと睨み付ける。
こんな得たいの知れない奴になにかされるくらいなら
「!!?!」
死んでやる
ちくしょう....