第16章 紅葉は紅く染まる
この数日、紅い薬を飲み続けていた。
ずっとずっと....。
紅いそれを飲むと、心が何かに染まっていくように感じた。
自分の中にあった何かが溢れ出しては、必死にそれと戦い欲を押さえる。
それなのに、それに飲まれてしまえばどれだけ楽なんだろうと思うと薬を口に運んでいた。
飲んでは押さえて、押さえては飲んで....。
自分がいったい何をしたいのか、忘れていくほどに狂っていく感覚。
がしゃんと何かが落ちれば、ハッとする。
彼女が入れてくれたコーヒーが、落ちて床にシミを作った。
ポロリと自分から涙が落ちれば、コーヒーのシミの上にまたシミができる。
君が好きだ
君が恋しい
触れたい....
頭がぼやんとして、気づけば割れたカップを握りしめていた。
プチプチと手のひらに血だまりが広がっていく。
ポタポタと落ちる血液を見つめた。
紅い紅い色だ。
窓辺に見える紅葉も同じように染まっていくんだろうか?
そんなことを考えながら、カップを片付けていく。
手のひらに包帯を巻く。
ズキズキとする痛み。
なんで自分がこんなめにあっているのか、わからない。
考えれば考えるほど、紅色が自分の中に広がっていくような気がした。
何故?
そうか、そうだ
君のせいだ....
ニヤリと口角をあげて笑った。
涙が止まらない。
笑って、泣いて、泣いて、笑って
それを繰り返し繰り返し。
心が確実に何かにのまれていった。