第16章 紅葉は紅く染まる
深夜に....
ふっと目を覚ます。
あの夏祭りの日から、とくに変わったこともなく。
毎日馬鹿松達のお世話で、えっちらおっちら働いていた。
過ぎ行く日々はあっという間で、秋が深まって月が綺麗な夜だ。
ただ一つだけ腑に落ちないのは、四肢が動かせないということ。
これはなんの冗談なんだろうと大きな窓を見れば、紅い紅い月と紅色の紅葉が私を見下ろしていた。
窓の外は秋で彩られている。
綺麗なはずなのに、嫌な予感がした。
胸騒ぎが止まらない。
紅いあの色が、何故か私に不安を掻き立てる。
声を出そうとするも、なにかで押さえられている口は言葉を発することを許さない。
闇の中へ言葉が落ちていく。
平安の次は、戦国。
平和な時代の中に、身を落としていればいずれは戦乱の時代がやってくる。
それを裏づけるのは人が踏んできた歴史だ。
ここ最近、あまりにも平和すぎたんだ。
うっすらとそう感じたのは、月があまりにも紅いせいだろう。
いく千の時を見つめてきた月が紅く染まる。
血のように紅い月は人を惑わせるのだ。
「おはよう」
低い声が私に挨拶をする。
ゆらりと揺れる影、月明かりがあるはずなのにその人物を特定することはできない。
「いい、格好だね」
ポツリと溢された言葉。
これは相当に不味いやつだ。
「じゃあ、始めようか?」
ぎらっと睨み付けたところで、こんな部様な格好ではきっと脅しにもならないだろう。
ベットに手足を縛られたこの格好では....。
長い夜が幕を開ける。