第15章 祭り囃子と夏の終わりー後編ー
「いい風だ」
夜空を飛びながら、俺はぼそりと呟く。
腕の中のレディは黙りこんだまま、俺のいうとおりにしっかりとつかまっている。
「レディ、ほら見てみろ」
ぴたりと止まってレディを急かす。
夜空に次々と咲いては消えていく儚い花。
「花火って綺麗だよね.... 」
花火に見とれながらレディはそういった。
「たしかに、花火は美しいな....だがそれは一瞬の輝きだ」
俺がそう言うと、レディは花火から目をそらすことなく呟く。
「一瞬の美だよ、あの一瞬の中にたくさんの人の心がこもってる。だから花火は美しいの、ゆうなれば人の人生と同じなのかもしれないね。」
長く生きてきた俺達には、理解できないのかもしれない。この世の理から離れ生きてきた俺達には....
だが、人の儚さも美しさもきっと誰よりも見てきたんだ。わからないこともないさ....
「レディ、レディもあの花火のように美しい」
「そんなイタい台詞望んだわけじゃないんだけど....」
手厳しいレディだ。
「いや、本当のことさ....俺は思ったことしか口にしないんだ」
「だろうね、嘘とかつけなさそうだもん」
相変わらず辛口なレディだ。
やっということを聞いたと思えばこれだ....
「でも....ありがとう」
首にまわされた腕に少しだけ力が入った。
「この夜空に咲く花よりも、一面に輝く星よりも美しいぞレディ」
「はいはい、イタい発言ありがとね」
素直じゃないレディ
だが....
レディの胸元にしっかりと握られていた巾着をみてふっとまた笑う。
レディお前は優しい女だな....