第15章 祭り囃子と夏の終わりー後編ー
「約束してくれないか?辛いときは俺達を頼ると.... 」
真っ直ぐと見つめられた。
曇りのない瞳だった。透き通るような瞳。
大丈夫と言えるような感じではない、私を見透かす瞳が綺麗だった。
「....考えとくよ」
小さくそういった後に、空に大きな花が咲く。
「あっ....花火始まったみたい」
ぱあっと咲いたその色は青。目の前のその人と同じ色。
「レディ、行こうか」
低く優しい声と、大きい手のひらが前に差し出された。その手をゆっくりととる。
次の瞬間、カラ松の腕の中に収まる体。
言葉を発することのできないまま、カラ松を見れば、穏やかで優しい顔をした彼が瞳に映る。
柄にもない。
あんなに馬鹿にしていた相手だ、それなのに今は悪態をつけない。
自分の心を見透かされたからだろうか?
見透かされた心を優しく包まれれば、それは心地よく海の底へ沈んでいくような、そんな感覚だ。
そして、きっとここで暴れても悪態をいくらついても私を離してくれることはないと、思い知らされたからかもしれない。
少しでも負担を軽くするために、カラ松の首に腕をまわす。
少しでも迷惑をかけたくない、そう思ったからだ。
けして足が痛すぎるとか、そんなんじゃない。
甘えてるわけじゃない....
そう....
ただ、こいつにたまには合わせてやってるだけ....
心で必死に否定する。
そんな私に
「いいこだ.... 」
低く、優しい声だ。
何かを許されたような、そんな気がした。
下を向いたまま、口ごもる。
「しっかり捕まってるんだぞ」
ふわりと空へ浮かんでいく体。
それと同じように心も少し軽くなった気がした。