第15章 祭り囃子と夏の終わりー後編ー
「......甘えるってなにが?」
ますます訳がわからないと言いたげな表情だ。本当に困ったレディだな。
「俺達にもっと甘えたっていいんだぞ?レディ?」
やっと言葉の主旨がわかったのか、力なく笑いはじめるレディ。
「甘えてるよ、住まわせてもらって.... みんな....優しくしてくれてる。」
「....レディ」
目を細めて笑うレディは悲しげに見えた。何処かで一線をひいているんだ。
どんなに笑っていても、レディが隙を見せたことはない。
その小さな肩に何を背負っているのかは、俺達の知るところではないが、無理に強くあろうとする癖がある。
俺達に弱さを見せないレディ。気高く美しいと言えば聞こえはいいかもしれない。
「レディ、無理はしないで欲しい 」
「....何が?」
「本当に辛いときは甘えていいんだ」
ふっと笑えば、困ったような顔をして笑う。
「ありがとう、カラ松は優しいね.... 」
「約束してくれないか?本当に辛いときは俺達を頼ると.... 」
「....考えとくよ」
ドーーン!
レディの一言が聴こえたと同時に、空に火の花がぱあっと咲き誇る。
「あっ....花火始まったみたい」
ふっと上を見つめるレディ。
花火の灯りに照らされ瞳に火花が宿る。
「行こうか、レディ」
そっと手を差し出して、レディをゆっくりと立ち上がらせる。
ばっとレディを抱き上げる。
困惑する顔をじっと見つめる。
沈黙の時が少し流れれば、何かを悟ったように俺の首に手を回す。
「いいこだ」
俺が笑うとレディは恥ずかしそうにうつ向いた。