第15章 祭り囃子と夏の終わりー後編ー
差し出された足を持ち上げて、そっと下駄を脱がせて下に置く。
騒がしい祭り囃子が遠くできこえる中で、下駄がカランと小さな音をたてた。
「やっぱりか.... 」
思った通りだ。レディの親指と薬指の間から紅い血が滲んでいた。
「なんで、わかったの?」
困ったような顔をして俺を見つめる。そんなに見つかりたくなかったのか。
「言ったろ?ヴァンパイアは鼻がいいと....
足先から甘い香りがしたんでな.... 」
滲む紅い鮮血が俺を惑わす。
なんて甘美な香りなんだ。
俺は甘美な香りに酔いしれそうになったが、今はそれどころではない。
「こんなになるまで、ほっておいたのか?」
俺の問い掛けに、ぐっと言葉を詰まらせるレディ。
「.... みんなを探してて、それどころじゃなかった」
「ふっ....困ったレディだ」
袖口の中からごそごそと綿素材のハンカチを取り出す。
「うわ、それまでイタ松柄?いったいわー」
ふっと笑いながら、ハンカチの端を自分の口元に持っていく。そのままビリっと音をたてて縦にハンカチを破った。
「ちょっ!!それオーダーメイドだよね!なにしてんの!!」
慌てるレディを無視して、レディの足を膝にのせた。ぐるぐると傷口にハンカチを巻きながら尋ねる。
「何故だ?」
ポツリと言葉を溢せば、レディは不思議そうな顔をしてこちらを見つめる。
「何故、甘えないんだ?レディ....」