第15章 祭り囃子と夏の終わりー後編ー
「あー、もう考えるのはよそう」
そうだ、考えたところで元の自分が戻ってくるわけでもない。
一度馬鹿になった感覚がもとに戻ることなんてそうそうないのだから....。
「な、なんだかわからんが、吹っ切れたみたいでなによりだ」
「ありがとう、さてみんなのとこ戻ろうか.... 」
一歩を踏み出した瞬間にズキンっと足が痛んだ。慣れない下駄で走り回ったせいだろう。
「急ごう、カラ松」
何事もなかったように平然と笑う、がしかし。いきなりガバッと抱き上げられた。
「....はっ?ちょ?何?」
いきなり抱き上げられてビックリなんですが、なにをしたいのでしょうか?
「あの、おろしてくんない?」
カラ松はその言葉を無視してキョロキョロとあたりを見渡している。
「無視すんなクソ松!おろせっつてんだろ?!」
「.....黙ってろ」
「....は、はい」
ポツリと低い声が耳に届けばもう黙るしかない。なにこいつ、いつも押しが弱いくせに。
そのまま人通りの多い場所から離脱していく。小さな社の前にある石段にそっと下ろされた。
「....足を見せてみろ」
げっ!こいつ気づいてる!
今まで気づかれたこととかなかったのに....
「い、嫌だ」
「.....鈴音、いうことをきくんだ。」
凛と響く低い声。
じっと鋭い眼差しで見つめられる。有無を言わさない瞳だ。こいつのこんな顔初めてみた。なにこれ、なにこれ....
「....はい」
そんな顔で見られたらもう言うことをきくしかないじゃんか。