第15章 祭り囃子と夏の終わりー後編ー
それにしても一松くん、どうしてあんなに不機嫌そうな顔してたんだろう?
ふむ?と首を傾げていたら、その答えは真後ろからやって来た。
「レディ!こんなところにいたのか.... ふっ....会いたかったぜ」
一瞬で理解してしまう私は、すでにこの一族に染まっているんだろうか。
「いや、探していたのはこっちな?」
くるりと振り向けば、案の定イタ松柄の....
ってあれ?
「イタ松や、イタ松柄の浴衣をどこで脱いできたんだい?」
イタ松柄の浴衣を着ているとばかりに思っていたのに、深い紺色の普通の浴衣を着ている。
「どうしたの?頭打った?それとも変なもの食べたの?
それとも自分の痛さに気づいたの?
あっそれはないか.... ないない、あったら怖い」
「レディ....それはどういう?」
困惑しているイタ松だが、困惑するのはこっちだ。どうしよう幻覚か幻覚でも見ているのか?
「ふっ....心配しなくても.... 」
バサッと浴衣をはだけさせれば、イタ松の顔がデカデカと描かれたタンクトップが現れる。
「安心したか?」
「ものすごく安心した」
なにこの会話、普通じゃないよね?
なんかもう全部これで持ってかれそうなんだけど....。
「ねぇ?てっきり浴衣もイタ松柄でくると思ってたのにどうして違うの?」
率直に投げ掛ける質問。
教えてくれないときっと今日は寝れそうにないというか、寝れない。
「イタ松?」
「いや、そこもうひっかからなくていいから」
早く理由を教えて。
「ふっ.... 俺はいつだって人を傷つけてしまうんだな.... これぞヤマアラシのジレン.... 」
「早く答えろクソ松」
「え.... はい.... 」