第15章 祭り囃子と夏の終わりー後編ー
耳元で紡がれる言葉を聞いてハッとした。
「そ、それって....?」
私が言葉を発する前に、一松くんはものすごく不機嫌そうな顔をしてチラッと私の後ろをみていた。
「....んっ」
ぱっと空になったカップを私から奪い去る一松くん。
「....後で」
短めな切り返しをされて、ポカンと口をあける。
それってどういう事なんだろうかなんて考えていたら、チリンッと涼やかな音色がした。
水琴鈴の音色が静かに響いたかと思うと、一松くんはそのままふっと居なくなってしまった。
ガヤガヤと周りの賑やかな声が、より一層耳に響く。
本当に猫みたいな人だ。
どこまでも掴めないそんな人だ。
残していった言葉の破壊力がありすぎて、言葉に詰まった。
いい逃げというやつだ。
ものすごくたちが悪い気しかしない。
ぼんやりと祭りの灯りを見ながら、心臓を捕まれた感覚に襲われる。
ズルいよね、そんな言葉残して行っちゃうんだもの。
その言葉が答えだとするなら、とても嫉妬深い人なのかもしれない。
それでいて、とても可愛らしい人なのかもしれない....。
「....今日は僕の匂いだね」