第15章 祭り囃子と夏の終わりー後編ー
「美味しい....」
嬉しそうにかき氷を食べる鈴音を見ながら、ふっと笑った。
グレープが好きだと言ったその瞬間、覚えてたんだなと思った。
オレとの記憶がなくなってしまった鈴音。
そんな鈴音のなかにオレとの思い出の痕跡が少しでも残っていることがたまらなく嬉しかった。
そんなことを思ってたら、鈴音からいきなりポロリと涙がこぼれた。
な、何事!!?
「!!?!何泣いてんの!?」
オレはあわてて浴衣の袖で鈴音の涙を拭いた。
「....嫌だったの?くずのゴミのオレと一緒にいてかき氷食うの」
その問いにふるふると首をふる鈴音。
「じゃあなんで泣くの....?」
「わからない、嬉しいのに....なんでだろうね」
困ったように笑う鈴音、女の泣き止ませ方なんてオレはしんないけど....
ぽんっと鈴音の頭に手をのせて撫でた。
「一松くん.... ?」
不思議そうに下から見つめられる。
じっと見つめられると、恥ずかしくなってきてぱっと手を引っ込めた。
冷静になって考えてみたら、ここ公衆の面前じゃん!
オレなにしてんの!?
恥ずかしい!!穴があったら入りたいいぃ!!
あまりの恥ずかしさに、いっきにかき氷を口にほりこむ。
そうでもしなきゃ恥ずかしさでおかしくなる!
「ちょ!そんなにいっきに食べたら!!」