第15章 祭り囃子と夏の終わりー後編ー
「....どうする?」
にたりと笑った顔がまた怖い。
悪魔だ。悪魔がおる。
「こ、これで勘弁してください!」
そう言って財布丸ごとを一松くんに渡すと、男は逃げるように退散して行った。
「....ねぇ?一松くん?激しく聞きたくないんだけど何を言ったの?」
「....別に、かき氷弁償してって言っただけ」
財布をポンポンと空中に投げながら、にたぁっとする。
その含み笑いは何なんだ!
ヤバイ、ヤバイ人....いやヴァンパイアだ!
それにしても、何故に彼はここにいるんだろうか?首を傾げていたら、明らかにキョロキョロし始める一松くん。
「....違う、オレの目的はあれだから」
ぴっと指を指した先にあったのは、マグロの串焼きだった。
「.... この祭りでしかでてこないから.... アルが食いたがってた.... ただそれだけ....」
たしかにマグロの串焼きなんて珍しいけど、本当にそれだけだったんだろうか?
「いいな、美味しそう。私も食べたい。」
ポツリとそう溢す。
するとじいっと一松くんが私を見つめた後に、スタスタと屋台まで歩いて行った。
なんとなくその後を追う。
「おっ!兄ちゃん!今年も来てくれたんだね!!」
威勢のいいおじさんの声が響く。
今年もってことは、じょ、常連!?
「....いつものと、人間用も」
いつもの!?なにそれ、言ってみたい台詞だよ!それは!
てゆーか人間用って何!?