第15章 祭り囃子と夏の終わりー後編ー
「んじゃ、いこーかお姉ちゃん」
どこをどういう流れになったらそうなるのか理解に苦しむんだけど....。
「たくっ、いい加減に.... 」
チリンッ
聞き覚えのある涼やかな音色が、静かに響いた。バッと後ろを向いたが、誰もいない。
音に気をとられている間に、冷てぇっというマヌケな声が聞こえた。
前を向けば、男の顔面が見事氷だらけになっている。ぶっちゃけウケますね。
「かき.... 氷?」
チリンッチリンッと音がなる。段々と近づいてくる音が、何かの怪談みたいだ。
チリリン.... 。
音がピタリと止んだ。
次の瞬間だった。
「....ねぇ?いつまで触ってんの?」
ボトリと何かを落としたような、低い声が男の真後ろから聞こえた。
じとっとした瞳、猫背のその人は不機嫌そうな表情と鈴の音色を引き連れて、なんの前触れもなく現れた。
「一松.... くん.... 」
「お前誰だよ!?いつのまに俺の後ろに!?」
そりゃまぁ引くよね?いきなり後ろに音もなく現れるんだもん。一種のホラーだよね。
それを増長させる鈴の音。
大通りでガヤガヤとにぎわう中で、やけにはっきり聞こえてくる音とそれが合わさったら。ガチで怖い怪談の出来上がりだ。
ボソッと男の耳元でなにかを囁く一松くん。
とたんにみるみるうちに相手の顔は青ざめていく。ついでに手の力も弱まったので、その隙をついて相手の手を振り払った。
いったい全体なにを言っているのか気になるけど、聞いたらきっと恐怖で眠れなくなりそうだ。
なぜって?
目の前の男の口から泡がぶくぶく出てきたからだよ!!
何を言った!怖い!怖すぎる!