第15章 祭り囃子と夏の終わりー後編ー
「そだ、二人先に戻っててくれる?」
私がそう言うと二人は顔を見合わせる。
「え?僕らも一緒に探すよ?鈴音ちゃん一人じゃ大変でしょ?ねぇ?十四松兄さん?」
「頑張りマッスルマッスル!」
んー、気持ちは嬉しいんだけどなぁ。
私はちょっと困ったように笑った。
「いや、若干ご機嫌斜めな馬.... おそ松とチョロ松くんがペアで一緒だと思うと少し不安なのね。」
こと馬鹿松の事だ。
チョロ松くんに絡みに絡んでいるに違いない。このままではチョロ松くんが不憫だあまりにも不憫だ。
「なるほど」
「確かにー!」
妙に納得する二人。
どちらか一人に一緒に来てもらうこともいいかもしんないけど、十四松くんを一人にしても腹黒あざとモンスターを一人にしても厄介だ。
「わかった、じゃあいこっか!十四松兄さん!」
「あい!!」
去っていく二人の後ろ姿を見ながら、ふふっと笑った。
二つの猫耳がキラキラと光っている、さっき元気を無くしていた黄色もピカピカと眩しく輝いていた。
「やっぱり、兄弟なんだな.... 」
ポツリとこぼした言葉を、夏の夜風に乗せた。
「兄弟....か....」
くるりと二人とは逆の方向を向いて歩き出す。
カランコロンと鳴る、蝶が舞う下駄を鳴らしながら、思い出すのは昔のこと。
懐かしい思い出ばかりが、思い出じゃない。
苦くて思い出したくない記憶もまた、思い出なんだと心にしまう。
感傷に浸りながら、イタ松を探す。
今はまだなにも思い出したくない。