第15章 祭り囃子と夏の終わりー後編ー
あーもうダメ!
こいつら本当にイライラする。
食欲は失せた。
こんな汚ないやつらの血なんか飲んだって美味しくないし。
そうだ....
「ねぇねぇ?こっちむーいて?」
僕は可愛らしい声で二人を呼ぶ。
瞳に力をこめる、二人の瞳にうつるのは僕の瞳の色。
祭りの華やかな色とは似ても似つかない、憎しみのこもった濁った色。
「あ、あれ?なんか体が熱く.... 」
「....私も」
僕はニヤリと笑った。
きっと凄いゲスい顔をしてるんだろうな....
どうしよう、とっても楽しいや
そうだよ?
だって僕はヴァンパイアなんだ。
人を惑わせて、人を貶めてそれを眺めて楽しむのがそういう一族でしょ?
こいつら二人とも、二度と悪口言えない体にしてやる....
僕の兄さんを馬鹿にした罰だ。
ふふっ....
そう、そう思った瞬間だった。
バッと僕の視界が暗くなった。
まぶたに感じるのはじんわりと温かい感触だ。
「だーーれだ!!」
色んな所から聞こえるガヤガヤという賑やかな声たちのどの声よりも、大きく響く声。
あーあー
見つかっちゃった。
本当に最悪のタイミングだよね。
どうしてこの子は僕の邪魔をするんだろうね。
いつもいつも乱されるんだ。
僕が残酷なことをしようとすると、君は現れるんだ。
君の存在が、僕の戻りたかった頃へ戻して行きそうな....
それがたまらなく怖くて、でもこんなにも心地いい。