第14章 祭り囃子と夏の終わりー前編ー
そんなことを考えていると、ピタリと十四松くんの足取りがとまる。
んっ?とおもって十四松くんの顔をみるとキラキラとした瞳で一点をみつめている。
なに見てるんだろ?
十四松くんの視線の先をみつめれば、赤くて丸い祭りでお馴染みリンゴ飴を見つける。
もう一度ちらりと見れば、やっぱり目をキラキラとさせている。
「一番大きいの下さい」
私はすかさず一番大きいのを買った。
くるっと振り返れば、よだれをたらしてじーとリンゴ飴を見つめる十四松くん。
すーっとリンゴ飴を横に動かすと、十四松くんも動く。
すーっと上にリンゴ飴をあげると、目線を上にあげる十四松くん。
沈黙している今も十四松くんはリンゴ飴をみつめている。
「.....あーん」
食べようとした瞬間、わたわたとあわてだしながらも黙ってこちらを見ている。
すっと口からリンゴ飴を離すと、パアッとした顔をする。
「....ぷっ.... んっふふ.... やばっ.... 」
なにこの生き物、ダメだ。
片手で口を押さえながら、必死に笑うのをこらえる。
もーダメっ!
「はい、あげるよ!」
その一言に、大きな口がいつもより大きく開いて瞳がキラッキラする。
「いいすか!?本当にいいすか!?!?」
「いいもなにも、これ初めっから十四松くんにあげようと思ってたんだよ」
笑いながらそう言えば、不思議そうに首を傾ける。
「お礼!全然足らないけど、浴衣嬉しかったから」