第14章 祭り囃子と夏の終わりー前編ー
「ダメだよ、ちゃんとまわりをみないと?」
そう言って冷静に怒るけど、心の中ではもうダメ。
母性本能しか出ない。
これだから十四松くんに甘いと言われるのかもしれないな。
「ごめんね」
素直に謝るところが十四松くんらしい。
「なにもなくて、本当によかった、ほら行こっか?」
私が手を差し出すとうんと言って、手を握り返してくる。
意外と大きい十四松くんの手にちょっとビックリする。
忘れそうになってたけど、十四松くんは男の子なんだよね。
「....危ないよ」
いきなり、ぐいっと抱き寄せられた。
ぽかんとなっている私の横を、たくさんの人がいっせいに通っていく。
「鈴音ちゃんもちゃんと前みないと!鈴音ちゃんはこっちね!」
そう言われて屋台側に体を入れかえられる。
ニコニコしながら、腕をぶんぶんと振る。
たしかに、十四松くんは子どもっぽい。
とっても純粋で....
だけど....
「鈴音ちゃん?疲れちゃったの?大丈夫?」
くるりとこちらを向いて、私を心配してくれる。
大きな手....
ごつごつした男の人の....
「大丈夫?」
ずいっと目の前に十四松くんの顔。
ふおおおっ!?!
「っと!ほんとに危ないよ!」
ビックリして転けそうになったのを片手で力強く引き寄せられる。
凄い力....
ふと、腕を触ると凄い筋肉だった。
たくましい腕....
細マッチョってやつ。
「あれ?顔赤いよ?大丈夫ー?」
....し、知らなかった。