第14章 祭り囃子と夏の終わりー前編ー
「ねぇねぇ!パパ!あれとって!!」
真横の親子がそう言ってはしゃいでいる。
「んー、パパには無理かなぁ?」
そう言って困った顔するお父さんに、女の子は泣きながらヤダヤダと駄々をこねていた。
「じゃあ、パパ頑張ってみるよ」
「うん!パパ頑張って!!」
そう言って女の子は、お父さんをキラキラと見つめている。
あの様子じゃ、きっと落とせないなんてことは私にはわかっている。
でも....
何故か苦しくなる胸を押さえながら、どうか落ちてと心で願う。
....えっ?
パンっと音がした瞬間、大きなぬいぐるみが落ちた。
「おおっ!スゴいね!!こりゃ大したもんだ!」
射的屋のおやじさんが、そう言った後に女の子に大きなぬいぐるみを渡す。
「やったぁぁぁ!!パパ!スゴいね!!!ありがとう!!!」
おおはしゃぎする女の子に、優しく微笑む父親。
それを見ていたのがバレたのか、女の子は私に近寄ってきた。
「みてみて!パパがとってくれたの!スゴいでしょ!?」
キラキラと笑顔を輝かせる女の子。
私は女の子と同じ目線になるように、しゃがみこむ。
「うん!スゴいね!!よかったね!」
そう言ったら、女の子はでしょう?ってにっこりと笑った。
「お兄ちゃんも見てたよー!君のパパ、スゴいねー!」
私の横でにかっとおそ松が女の子に笑いかける。
「えっへん!パパはね!射的の日本一なんだよ!」
「そっかぁ、お兄ちゃんもパパには負けちゃうなー」
よしよしと女の子の頭を撫でるおそ松は、とっても優しい顔をしていた。