第14章 祭り囃子と夏の終わりー前編ー
「うん、僕待ってるよ.... 」
僕は鈴音ちゃんを待つしかできない。
馬鹿の一つ覚えみたいに待つしか....
「うん!チョロ松くんが待っていてくれるなら安心だ!安心して行ける!」
ニカッと笑ってそんなこというんだもん。
もう何も言えないじゃないか。
きゅうっと締め付ける胸の痛みが、苦しくてたまらないけど
鈴音ちゃんがそういうなら待つよ。
「浴衣、ありがとう!でも一つ言わせてね?」
そっと手をとられて真っ直ぐに見つめられる。
強く光る瞳の色は、この祭りのどんな光よりも綺麗だ。
「いつもありがとうは、私だよ。私チョロ松くんがいるからおもっきり動けるの」
ここ最近のことを思い返せば、仕事しすぎでよく怪我をする鈴音ちゃんをずっとハラハラしながら見てたっけ。
君はすぐ無茶をするから、目が離せないんだ。
「チョロ松くんがいなきゃ、私いつだってボロボロだもん。
いつも.... ありがとう.... 」
そんな言葉を残して去っていく後ろ姿。
本当に気が滅入る。
手に届きそうで、届かない光を追うのは....
でも、諦めきれないということはきっとそれほど....
「甘っ.... でも.....うん、美味しい 」
わたあめみたいに、甘い後味をすっと残して去っていく鈴音ちゃんが愛しいんだ....