第14章 祭り囃子と夏の終わりー前編ー
「じゃあ、チョロ松くんはここにいて!」
カランコロンと鳴るのは、僕が用意し忘れていた下駄の音。
誰が選んだものだろう?
「私皆を探しに.... 」
誰かが選んだ下駄が、君を連れていってしまう。
そう思った瞬間、僕は鈴音ちゃんを腕のなかに閉じ込める。
「....チョロ松くん?」
不思議そうに振り返る鈴音ちゃん
行かないで、行かないで....
「....鈴音ちゃん」
このまま、君を独り占めできたらきっと幸せなんだろうな。
でも、三男という立場はどうにも僕をとどまらせる。
いいところは上が持っていく。
甘いところは下が持っていく。
なら僕が持っていけるものは何?
祭りの提灯の光が霞む。
このまま、時が止まればいいのに....
止めどなくあふれる感情は、きっと君が優しいせいだ....
優しすぎる君のせい....
「....鈴音ちゃん、気を付けてね」
ほら、やっぱり僕の立ち位置なんてこんな所だ。
一歩を踏みとどまらせるのは、僕の弱さ....
一番に選んで貰えたと思ったのにな....
自分の選んだ浴衣がこんなにも、切ない感情をつれてくるんて思いもしなかった。
苦しいのに、苦しいと言えない。
それは僕が鈴音ちゃんを好きで、君が皆を好いてくれてるから。
「チョロ松くん、大丈夫!
絶対馬鹿ども二人と十四松くんとアザトッティを探してくるから!だから安心して!」
笑顔でいう鈴音ちゃん。
違う、違うよ....
僕はそれでこんなに悲しい顔をしてるんじゃないんだよ?