第14章 祭り囃子と夏の終わりー前編ー
「さて、どうしたもんか」
悩みに悩んで、ピンとひらめいた。
すかさず松代さんにゴニョゴニョと話す。
「まぁ!いい考えね!」
ぱあっと二人明るくなって双方を見つめて、にっこりする。
「じゃあ早速準備をしましょうか」
ぐいっと腕をまくる松代さん。
仕事スイッチの入った松代さんは凄い。
一言で片付けられないほど凄い。
目にも止まらぬ速さで浴衣を着付けていく。
この人は仕事のことになると鬼だ。
そんなとこが好きだけど
「こんなものですかね」
鏡の前でおおっと声をもらす。
くるくると鏡をみながら、ふふっと二人して笑った。
「さてと、お次は髪を結いましょうか」
その一言にドレッサーの前に座る私の髪に、松代さんが手をかけた瞬間だった。
コンコンとドアが鳴る。
誰だろう?
二人して顔を見合わせる。
「鈴音様、うちです。ベルフェゴールです。」
意外な来客だなと思いながら、はいと返事をする。
あの一件以来全然話していない。
ベルフェゴールは松代さんをみるやいなや、ピキンと固まる。
「ベルフェゴール、何の用でここに来たのです?」
空気が変わる。
「いえ、鈴音様のお世話をしようと思いまして.... 」
重い空気の中、じっと松代さんはベルフェゴールを見つめる。
「あら、そうなのね、でも私がいます。お前は下がりなさい。ベルフェゴール」
松代さんの一言に、尻尾を下げながらドアノブに手をやるベルフェゴール。
「待って、松代さん。」