第14章 祭り囃子と夏の終わりー前編ー
「あらいけない!そうだったわ」
やっとガクガクをやめてくれた。
うえっちょっと酔ったわ。
「鈴音様は、着付けできないと思って来させていただいたんです。」
....当たりだ。
さすが松代さん。
「すみません、松代さん面目ないです。」
実は、皆が盛り上がってる中で自分が浴衣を着付けられないことを言うことができなかった。
「いいんですよ、本当にうちの松坊っちゃん達が申し訳ありません」
にこっと優しく笑う松代さん。
ああ、もう!
私は松代さんに一生ついていきます!
「それにしても、これは凄いわね」
ズラリと並べられた浴衣をみて、二人して困ったように立ちすくむ。
「私、どれ着るか悩んでて困ってるんです」
ふうっため息を一つこぼせば、松代さんに笑われた。
「もう本当に、坊っちゃん達は鈴音様が好きなのね」
その一言にじっと五色の浴衣を見つめる。
じわっとなにかがにじみそうになったのを、必死でおさえた。
いけない、感動してしまった。
ぐいっと顔をふく。
「私も、皆が大好きです」
ポツリとそうこぼせば、にっこりと松代さんに笑われた。
「あら。でも足りないわね?一色」
一色足りないことに、松代さんは首をかしげる。
「一松くん、お祭りが嫌いみたいで....なんだかその日機嫌が悪かったみたいなんですよね」
少し考えた後にあぁと何かしらを勘づいたらしく。
ふふっと松代さんは笑った。