第14章 祭り囃子と夏の終わりー前編ー
そんなこんなでお祭り当日の夕方。
いつの間にか、色とりどりの五色の浴衣がズラリと部屋のクローゼットに並んでいる。
思うんだけどさ、皆ね?
人の部屋に不法侵入することに何かしらの罪悪感はないのかな。
正統派のメイド服に身を包んだまま、はぁっとため息をつく。
とりあえず出してみようか。
そう思って、五色の浴衣を全部だしてみる。
赤、青、緑、黄、ピンク、それぞれの色の浴衣。
紫の浴衣は.... ないか、ちょっと寂しい。
さて、これはたぶん馬鹿松のだな。
白い生地に赤い金魚が舞っている。水の波紋と金魚が舞っていてとっても可愛い。
あっ巾着、でも中でも可愛いのは金魚がゆらゆらゆれるイヤリングだ。
意外とありだな。センスがいいのがなんか逆に腹立つ。
と思いきや、薄紅色のメッセージカードに描かれていた内容でさらにイラッとする。
ー鈴音!下着は濃い色のやつか、むしろはくなよ!ー
つまりはこれってさ、濃い色の下着ってことは白だから透けるよね?
それかはくなとか....
ははっ!くびり殺してやろうか!?!
いやむしろ死ね!マジで死ね!!
毎度おなじみキラッキラのゴミ箱に、メッセージをおもいっきり丸めて投げる。
さてお次は、緑だな!つまりはチョロ松くんね!
えっ、うん、察してよ。
順番通りとかいけるわけない。
パステルグリーンの生地に、ピンク色と水色の花が散りばめられている浴衣。
可愛い、普通に可愛いわ。
はらりとおちる若草色のメッセージカード。
綺麗な字でこう書かれていた。
ー鈴音ちゃん、いつもありがとうー
メッセージカードに下書きを消したあとがある。
履歴書じゃないんだから、と笑った。