第14章 祭り囃子と夏の終わりー前編ー
その一言にちょっと涙目になっているイタ松。
「泣くなよー、ほらブルーハワイ」
先ほどつくっていたかき氷は、どうやらイタ松の為に作っていたようだ。
「ん.... ぐすっ.... ありがとう、おそ松」
そういいながら、馬鹿松からかき氷を受け取ってしゃくしゃくし始める。
「これは鈴音のな?」
さっきより少し小さめのガラスの器に、真っ白なかき氷が出来上がっていた。
「みぞれのミルクだろ?」
鼻の下を擦りながらどや顔で渡してくる。
「....ありがと」
なんか腹立つけど、かき氷が食べれるならこの際かまわない。
「んで、俺はこれ!」
出来上がった白い氷のお山が、黄色くなっていく。
レモン味ではない。
アルコール独特の匂いが、鼻を駆け抜ける。
ビール味だ。
「昼間からビールとか、労働者に謝れ!」
しゃくしゃくとみぞれのミルクを食べながら、呆れつつツッコむ。
「僕のは?僕のは?」
足をじたばたとさせて十四松くんが催促する。
「十四松くんは、さっきので十杯目でしょ?これ以上食べたらお腹壊すからダメだよ」
へーこーみーと残念そうにいう十四松くんに、私はかわりにとロリポップを渡す。
「なにこれ、なにこれ!すっげー綺麗!!」
透明な球体の中に、宇宙が閉じ込められているロリポップだ。
「ん、ネット漁ってたら見つけたの、十四松くん喜ぶかなって」
十四松くんの笑顔みたさに、わざわざネット注文してしまったのはもちろん内緒である。