第14章 祭り囃子と夏の終わりー前編ー
「んっ、あまっ」
唇から覗く鋭い牙が、少しだけ指先にあたる。
そのせいで、少しだけ指先に傷がつく。
指からじわりと出てくる血液。
「.... ラッキー」
ぽつりと言葉をこぼしながら、私の指先と血を嬉しそうに味わうおそ松。
「つっ.... 」
このやろうと抗議しようとすれば、おそ松の瞳の色に引き込まれる。
ワインレッド....
深い深い血の色だ。
でも、前とは違って恐ろしさとかはなくてどこか切なげにみえた。
指先から力が抜けていくような感覚に陥ろうとした瞬間だった。
ばしゃーーー!!!
おそ松の顔面に勢いよく水がかかる。
「ふざけんなー!今いいとこだったのに!」
ガタンとイスを後ろに倒しながら、水が飛んできた方向に目をやる。
「変態処理にきました!」
完全防御形態でその場に立っていたのは、十四松くん。
背中に水のポンプを背負っている。
でっかい水鉄砲だな。
そしてその防護服は暑くないんだろうか?
「お兄ちゃん本気出しちゃうよー?」
私の血液吸血時間を邪魔されたのがよっぽど頭にきたのだろう、ぱちんと指を鳴らす。
がしゃんとおそ松の手におちてきたのは、これまたどでかい水鉄砲だ。
レバーをしゅこしゅこして水でるやつね。
「覚悟しろよ十四松!」
やばい
目がマジじゃん!
.... まぁほっといてもいいか
バカ松が倒したイスをなおして、しゃくしゃくと真っ白なかき氷を食べる。
んー
やっぱり、かき氷はみぞれの練乳がけに限るわ。
このラインナップの中ではだけど....
「ひゃっほーーーーい!!!!」
「十四松!このやろうーー!!!」
戯れる(?)二人をよそに私はかき氷を味わっていた。