第13章 バスタイムはアロマキャンドルとともに....
「はーなーせ!」
トド松くんの腕のなかでじたばたと暴れる私。
目の前にはトド松くんの胸が見える、線の細い綺麗な体が目の前に....
もうパニック寸前。
甘い甘い匂いと、トド松くんの妙な色香に惑わされてぐるぐる目を回す。
頼む、頼むから離してくれ!
「お願いします、離してください」
物凄く丁寧に言う。
屈辱的、本当に屈辱的。
「....えー?どうしよっかなぁー」
殺してやりたい、つーか自分の都合のいい話だけは耳に届くんですね。
「じゃあ、ほら」
ぐいっと顔を上に向けられる。
「キスして?」
うるっとした瞳の中に熱っぽさがあいまって、男のくせになんて魅力的な顔するんだと思った。
女とも男とも違う。
女の色気と男の強引さをあわせ持つ、たぶんトド松くんしかできない危ない誘惑。
とくんっと鳴るのは心臓の音。
男でも女でも虜にしてしまいそうな彼は、ヴァンパイアというよりもサキュバスのようだ。
言うことを聞いてしまいそうになる。
全部どうでもよくなって、彼に溺れたらなんと楽だろうとそんな考えがよぎるくらい。
トド松くんの力のせい?
それとも、甘い香りのせい?
ダメだ、ダメだ、ここでのまれたら前みたいに....
ぶんぶんと顔を振って、ぐいっとトド松くんの胸を押し返す。
「だめ.... 」
えっ?
そう思った。
彼は、人が嫌いなはずなのに
私を殺そうとしてたはずなのに
脈打つ胸の音が、私と同じように速いのは....
どうして?