第13章 バスタイムはアロマキャンドルとともに....
「うわ.... 綺麗.... 」
ひょいっとおろされた先は、大きなジャグジーつきの浴槽の前だ。
灯りがなくて真っ黒な浴室に、ゆらゆらと揺れるアロマキャンドル。
浴室じゅうに甘い香りがする。
桜と桃かな?
嫌いじゃない。
「気に入った?」
横から声が聞こえて、そちらを向く。
「うん、とっても綺麗.... 」
こんなお風呂は初めてだ。
「よかった、気に入ってくれて.... 」
優しい声でそう言われれば、なんだか気が抜ける。
「じゃあ一緒に入ろっか?」
しまった、そういう主旨だった。
いっきに現実に戻されて青ざめる。
いやいや、腹を決めたんだ。
こんなとこで怖じ気づいてはいけない!
「絶望と、なにかしらを覚悟した顔をしてるところ悪いんだけど.... 」
ばさっと渡されたのは服。
「なにこれ?」
見たところなんのへんてつもない、黒いTシャツと短パン。
「えっ?何って水着だけど?」
........はい?
「えっ、なになに鈴音ちゃん裸で入る気だったの?」
いや、普通風呂っつったら裸が基本だよね?!
「ふーん、そんなに僕にサービスしてくれるんだ。ふふっじゃあこれは要らないかな?」
水着をどっかに投げようとするトド松くんの手をがっしりと掴む。
「ありがたく着させていただきます!」