第11章 彼女に福寿草を捧ぐ....
「これでいいかな?」
黄色い花を植えた。
青空と草原が広がる僕の庭....
名前も知らない彼女から貰った花を....
「福寿草かぁ.... 」
そっと風に揺れる黄色い花を見つめながら、彼女のことを思い出す。
「.... もう会えないっすね 」
トド松に記憶を消してもらったから、彼女はもう僕を思い出すことはない。
「これで、彼女は危険にさらされることもないし、幸せになれるよね」
僕がいなくなった方がきっと....
きっと....
あれ?おかしいな?
なんで僕泣いてるんだろ?
透き通った湖に映る自分の顔は、酷く歪んでいた。
初めからわかってのに
ヴァンパイアと人が上手くいくわけないなんてこと....
もう.... 人を好きになることはないんだろうな....
もう人を不幸にしたくない....
あのあとこの花のことを調べたけど....
永遠の幸せの他に別の花言葉があったんだよ....
「悲しい.... 思いで.... 」
ぽつりと言葉を発して、ぐいっと涙をふく。
本当にその通りになっちゃったね.... ?
思えば、彼女が僕にこの花を贈った時点でこうなる運命だったのかもしれない....
「泣いちゃダメ.... 皆心配するから.... 」
僕が泣いてたら、皆心配する....
おそ松兄さんなんてとくに....
「笑わなきゃ.... 」
湖にいつもの笑顔を映した後に立ち上がる。
「僕は.... 幸せ... 」
そう言った僕に、暖かい何かが覆い被さってきて草原に倒される。
「君.... 誰?」
そう言った瞬間に、目が覚めた....