第11章 彼女に福寿草を捧ぐ....
「あっ.... いけない、いけない.... 」
十四松くんは、そういって自分の袖でごしごしと何回も顔をふく。
大きな口元だけが見える。
私はいてもたってもいられなくて、草原に十四松くんを押し倒した。
「泣けよ!」
大声で叫んだ。
「泣きたい時は泣け!!」
空に届くくらい大きな声で叫んだ。
こんなのおかしいよ、さよならもありがとうも言えないまま離れることの辛さを私は知っている。
「泣いていいんだよ!だって!悲しいんだから!無理に笑うな!無理に幸せなんて笑うんじゃない!」
私の一言に、私の下敷きになってしまった黄色いヴァンパイアは、つうっと涙を一筋こぼす。
「僕.... 僕は.... 本当は....忘れて欲しくなんて.... なかった.... 」
ダムが決壊したみたいに、溢れ出す涙は止まらない。
「僕は.... ちゃんとさよならいいたかった」
言葉がこぼれるたびに溢れ出す涙は、倍でそのまた倍で....
「僕は.... 人間に.... 生まれたかった....!」
ーーー君といたかったーー
その一言をいった瞬間に、空に涙声が響き渡った。
私はなにも言わず、ぎゅうっと十四松くんを抱き締める。
青空に響きたわたる叫びを、黄色い花と私だけが聞いていた。