第11章 彼女に福寿草を捧ぐ....
「これだけあればなんとかなるかな!」
僕は両手いっぱいの金貨を袋に詰めた。
毎日毎日、お屋敷の仕事をお手伝いして貯めたお金。
これだけあったら、きっときっと彼女を救えると信じて僕はにぱっと笑った。
「いよぉーし!ハッスルハッスル!マッスルマッスル!」
嬉しさの余り、僕はその日はしゃいでいた。
彼女を助けることができると思って、嬉しくて嬉しくて....
僕は大急ぎで玄関ホールへと向かう。
彼女は笑ってくれる、きっとありがとうってたくさんたくさん....
でも
現実は....
そうじゃなかった....
「えっ.... 」
僕は....
玄関ホールで呆然と立ち尽くした....
薄暗い玄関ホールで佇む、二つの黒い影
そのうちの一つから赤いマントがバサッと風を受けて舞い上がる。
「....おそ松.... にい.... さん....?」
僕は一歩一歩、影に近寄る。
おそ松兄さんがぐったりとしている誰かを、支えて立っていた。
誰かを....
ううん
誰かじゃない....
「な.... に.... して.... 」
僕のよく知る髪の色だ....
亜麻色の優しい髪の色....
一つ見覚えがないとすれば、首筋から赤い赤い筋が2本できていたこと....